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2025年11月20日

トラックの温度管理が重要な理由|食品配送における3つの温度帯とトラックの種類

食品配送におけるトラックの温度管理は、企業の信頼を左右する重要な業務です。

しかし、日々の運行管理に追われる中で、その重要性を再確認したり、新しい管理方法を検討したりする時間はなかなか取れないかもしれません。

本記事では、食品輸送の品質を守るために不可欠なトラックの温度管理について、その重要性から、基本となる3つの温度帯、各温度帯に適したトラックの種類まで、現場で役立つ知識をわかりやすく解説します。

さらに、従来のアナログ管理が抱えるリスクを解消し、荷主からの信頼を確固たるものにするための具体的な解決策もご紹介します。ぜひ貴社の輸送品質を一段階引き上げるためにも最後までご覧ください。

トラックの温度管理が食品配送で重要な理由

なぜトラックの温度管理は、これほどまでに重要視されるのでしょうか?

一度の失敗が会社の信頼を失墜させ、法令違反に問われるリスクさえあります。「いつも通りやっているから大丈夫だろう」という考え方は通用しません。

その背景には、企業の「信頼」と「責任」に関わる明確な理由があります。この本質を理解することが、盤石な品質管理体制への第一歩です。

ここでは、運行管理者が押さえるべき重要性を、3つの視点から具体的に掘り下げていきます。


食品の品質基準を守るため

トラックの温度管理は、荷主が設定する厳しい品質基準をクリアし、企業の信頼を守るための重要な要素です。

食品メーカーや小売店にとって、商品の品質はブランドイメージそのものです。

輸送中のわずかな温度変化が原因で、商品の風味や色、鮮度が損なわれれば、ブランド価値の毀損に直結します。そのため、荷主は運送会社に対して、自社の製造工程と同じレベルの厳格な品質管理を求められるのです。

例えば、チルド品の温度がわずかに上昇しただけで、以下のような問題が発生する可能性があります。

  ● 精肉:ドリップが流れ出て、うま味成分が失われる

  ● 乳製品:風味が劣化し、消費期限が短くなる

  ● カット野菜:変色やしおれが発生し、商品価値がなくなる

一度でもこのような品質劣化を起こしてしまうと、損害賠償や取引停止といった深刻な事態に発展しかねません。


消費者の安全を守る責務があるから

適切な温度管理は、食中毒などのリスクから消費者を守り、食品を扱う事業者としての社会的な責務を果たすために不可欠です。

トラック運送は、単にモノを運ぶだけでなく、消費者の安全という大きな責任を担っています。

食中毒の原因となる食中毒菌は、10℃~60℃の温度帯で活発に増殖するものが多いです。特にトラックの荷室内は、夏場には外気温以上に温度が上昇することもあり、細菌にとっては絶好の環境となり得ます。

輸送中の温度管理の不備は、目に見えない細菌を増殖させ、消費者の健康を直接脅かす危険性をはらんでいるのです。

食品輸送で特に注意すべき細菌と、その増殖温度帯は以下の通りです。

細菌名主な原因食品発育温度帯
サルモネラ菌卵、食肉など10℃~48℃
腸炎ビブリオ魚介類15℃~42℃
黄色ブドウ球菌弁当、おにぎりなど10℃~45℃

食中毒菌の増殖を抑えるには、10℃以下での低温管理を徹底することが重要です。


HACCPに沿った衛生管理に対応するため

トラック輸送における継続的な温度管理と記録は、2021年6月から完全義務化された「HACCP」に対応するために必須の取り組みです。

HACCPとは、食品の製造から消費者に届くまでの全工程で、発生しうる危害(食中毒菌の汚染など)を分析し、それを防ぐための重要管理点を定めて継続的に監視・記録する衛生管理手法です。

トラックでの輸送過程もこの「工程」の一部と見なされるため、運送事業者もHACCPに沿った管理体制の構築が法的に求められています。

HACCPで運送事業者に求められるのは、主に以下の点です。

  ● 継続的な監視:輸送中、荷室内の適温の維持

  ● 記録の保管:いつ、どのくらいの時間、何度で運んだかを正確に記録し保管

  ● 問題発生時の対応:温度逸脱などの問題が発生した時の原因究明と改善策

手書きの日報では、記録の正確性や客観性に限界があり、HACCPの要求水準を完全に満たすのは難しいのが実情です。

HACCPへの対応は、単なる義務として捉えるのではなく、自社の管理体制を見直し、近代化する絶好の機会と捉えましょう。そのためには、正確な記録を残せる仕組みの導入が重要です。

トラックに使われる3つの温度帯と定義

トラックには3つの温度帯が使われており、食品輸送には基本となる明確な基準が存在します。この基準を正しく理解し、迷いなく使い分けることが確実な品質管理のポイントです。

ここでは、主要な3つの温度帯について、その定義と対象品目をわかりやすく解説します。


低温(チルド)

低温(チルド)輸送とは、-5℃~5℃の温度帯で「凍らせずに」鮮度を保つ輸送方法です。

チルド輸送は、数ある温度管理の中でも特に繊細さが求められる領域になります。

0℃近い低温状態は、食品の鮮度を保ちつつ、凍結による細胞組織の破壊を防ぐことができる最適な温度帯です。細菌の活動を抑制しながら、食品本来の風味や食感を損なわずに輸送できます。

チルド輸送の対象となる主な品目は以下の通りです。

  ● 乳製品:牛乳、ヨーグルト、チーズ

  ● 食肉加工品:ハム、ソーセージ

  ● 日配品:豆腐、生麺、こんにゃく

  ● 和洋菓子:生クリームを使ったケーキ、和菓子

  ● 惣菜:サラダ、煮物

上記の品目は、わずかな温度上昇でも品質が劣化しやすく、逆に凍らせてしまうと解凍時に水分が抜けて食感が大きく変わってしまいます。

そのため、チルド輸送では、外気温や配送ルート、積み下ろしの時間などを考慮した、きめ細かな温度設定が重要です。


冷蔵(パーシャル・氷温)

冷蔵輸送とは、主に0℃~10℃前後の温度帯で品質を保つ輸送方法で、品目ごとの特性を理解することが大切です。

野菜や果物の中には、温度が低すぎると「低温障害」を起こし、かえって品質が劣化してしまうものがあります。

そのため、チルド帯よりもやや高めの温度での管理が必要です。品目ごとに最適な温度が異なるため、幅広い知識が求められます。

冷蔵輸送の対象となる品目の例と、適温の目安と注意点は以下の通りです。

  ● 葉物野菜は0~5℃:乾燥を防ぐことが重要

  ● 果菜類(トマトやきゅうりなど)は7~10℃:低温障害を起こしやすいため注意

  ● 卵は8~10℃:急な温度変化による結露に注意

同じ「冷蔵」でも品目によって最適な温度は異なります。

新しい品目を輸送する際は、必ず荷主と連携し、最適な管理温度を確認する習慣をつけましょう。その一手間が、輸送品質を向上させます。


冷凍(フローズン)

冷凍(フローズン)輸送とは、-18℃以下の低温を「絶対に維持する」ことが求められる輸送方法です。

冷凍輸送では、いかにして低温を維持し続けるかが最大の課題です。

-18℃以下では、微生物の活動がほぼ完全に停止し、食品の酵素による化学変化も抑制されます。これにより、食品の品質を長期間にわたって安定して保つことが可能です。

冷凍輸送の対象となる主な品目は以下の通りです。

  ● 冷凍食品:調理済み冷凍食品、冷凍野菜、冷凍水産物

  ● アイスクリーム類

  ● 冷凍された食肉・魚介類

冷凍輸送で最も注意すべきは、荷物の積み下ろしや配送中のドアの開閉による温度上昇です。一度解凍された食品は、再凍結させても元の品質には戻りません。

荷積み・荷降ろしの手順をマニュアル化し、短時間で作業を終えるよう徹底しましょう。「開ける時間を最短に、閉める作業を最優先に」が重要です。

温度帯で使い分ける!トラックの種類とそれぞれの特徴

食品輸送では、車両の特性を正しく把握し、最適に使い分けることが大切です。

車両選定のミスは、品質劣化を招くだけでなく、燃料や車両寿命にも影響します。

ここでは、代表的な3種類のトラックに焦点を当て、その特徴や用途について解説します。


保冷車

保冷車とは、荷室が断熱材で覆われた「冷却機能のない」トラックであり、短距離・短時間の輸送に適しています。

保冷車はコストメリットが大きい反面、その限界を理解して使うことが重要です。

保冷車は、魔法瓶のように外からの熱を遮断することで、荷室内の温度を一定時間「保つ」構造になっています。冷却装置がないため、自ら荷室を冷やすことはできません。

あくまで、あらかじめ冷やされた荷物の温度を維持するのが役割です。


冷蔵車

冷蔵車は、荷室に「冷却機能」を搭載しており、チルドから冷蔵帯まで幅広い温度帯に対応できる、食品輸送の万能選手です。

冷蔵車は汎用性が高い分、最大限に性能を活用するための知識が求められます。

冷却装置(クーリングユニット)によって荷室内の空気を冷やし、設定した温度を安定的に維持することが可能です。外気温が高い夏場や、長距離輸送でも安心してチルド・冷蔵品を運べます。

冷蔵車の能力を最大限に活かすためのポイントは「予冷」です。

  ● 荷物を積む前に、あらかじめ荷室を輸送する温度まで十分に冷やしておく

  ● 冷やしておいた荷物を素早く積み込む

上記を徹底することで、荷物の温度上昇を防ぎ、冷却装置への負荷を減らして燃費の悪化を防げます。


冷凍車

冷凍車は、-18℃以下の厳しい低温環境を維持するための「強力な冷凍機」を搭載した特殊な車両です。

冷凍車には、冷蔵車よりも高性能な冷凍機と、分厚い断熱壁が備わっています。これにより、外気温との大きな温度差がある過酷な条件下でも、-18℃以下の安定した低温環境を作り出し、維持することが可能です。

冷凍車を運用する上で必ず理解しておくべき機能が「デフロスト(霜取り)」です。冷凍機を長時間作動させると、冷却器に霜が付着して冷却効率が低下します。これを防ぐため、一時的にヒーターを作動させて霜を溶かすのがデフロストです。

一時的に庫内温度が上昇するため、荷物に影響が出ないよう、走行中に自動で行われます。荷物の積み下ろし中にデフロストが作動しないよう、手動で操作する知識も必要です。

まとめ:トラックの温度管理をDX化!IoTシステムで課題を解決

本記事では、食品配送におけるトラックの温度管理の重要性から、基本となる3つの温度帯、トラックの種類について解説しました。

荷主の要求に応え、消費者の安全を守るためには、正確な温度管理が不可欠です。

しかし、手書きの温度日報やドライバーの感覚に頼った従来のアナログ管理では、記録の不正確さや、トラブル発見の遅れといったリスクがあります。クレームが発生した際に、自社の正当性を証明する客観的なデータがないことに不安を感じている管理者の方も多いのではないでしょうか。

そのような課題を解決するのが、遠隔で温度管理ができる太平洋工業株式会社の

「e-WAVES」です。

e-WAVESを導入すれば、以下のことが可能になります。

  ● 事務所にいながら、全車両の庫内温度と位置情報をリアルタイムで把握

  ● 設定温度を逸脱した際に、管理者とドライバーへ自動でアラートを通知

  ● 正確な温度データを自動で記録・保存し、いつでも帳票として出力

手書きの手間や記入漏れの心配から解放されるだけでなく、万が一の温度異常にも即座に対応でき、食品の品質劣化を未然に防ぎます。

また、改ざん不可能な温度記録は、HACCP対応はもちろん、荷主への信頼性の高いエビデンスとして活用でき、クレーム時の対応にも困ることがありません。

輸送品質を向上させ、荷主からの信頼を確固たるものにしたいとお考えでしたら、ぜひご検討ください。

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